探究テーマを考えるとき、「社会問題じゃないといけない」「すごいことをやらないと意味がない」
そう思っていませんか?
でも実際は、日常生活の中でふと動いた感情こそ、探究の入り口になるときもあります。
「なんで今、私はこれが気になったんだろう?」
その小さな引っ掛かりを、ちゃんと掘り下げてみる。
この記事では、実際に探究に取り組んできた先輩たちに、テーマの決め方や、つまずいた瞬間、探究の進み方について、シリーズで掲載していきます。
うまくいった話だけでなく、悩んだり止まったりしたリアルな過程も、そのまま。
兵庫県立大学 環境人間学部環境人間学科 二回生
あなたの探究テーマは何でしたか?
私の探究テーマは「聴覚の鋭さと曖昧さ」です。
道で救急車の音が聞こえたとき、その方向をすぐ正確にいえるかという疑問から始まりました。
人の感覚は曖昧だと思われがちですが、視覚障害のある方が音を頼りに歩いていることから、
聴覚は実はとても鋭いのではないかと考えました。
調べる中で、耳は音を聞くだけでなく、三半規管という平衡感覚も担っていることを
知りました。そこで「三半規管に負荷をかけると、音の方向はどれくらい分かりにくくなるのか」
という問いを立てて実験しました。
その結果、年齢や乗り物酔いとの関係も含めて調べると、若い人ほど音の方向を間違え
やすい傾向があり、三半規管の発達との関係が示唆されました。
(写真)探究実験時のメモ

探究をはじめたころ、どんな状態でしたか?
右も左もわからない状態でした。
一番困っていたのは、「テーマが自由すぎる」ことでした。
規定がなく、「自由に決めていい」と言われると、逆に選択肢が無限に合って、
何を選べばいいのか分からなかったです。
なかなか納得できるテーマが決まらないうちに、周りの人たちはどんどん先に進んでいって、
焦りや不安を感じるようになりました。
クラス全体の雰囲気も、「探究はめんどくさい」「やらなきゃいけないからやる」という感じで、
真剣に取り組むと浮いてしまうんじゃないか、という怖さもありました。
それでも私は、一度気になることができるとずっとそのことを考えてしまうタイプで、
そのおかげで周りの空気に流されず、自分の問いを深めていくことができました。
一番しんどかった/止まった瞬間はどこでしたか?
テーマ設定から問いを立てるまでの時間です。
好きなことや気になることはたくさんあります。
でも、そのどこを切り取るのかがなかなか決められませんでした。
「どうせやるなら、これからの生活に役立つものにしたい」
そう思うほど、自分で自分のハードルを上げていました。
さらに周囲からは、「学生の本業は勉強だから、探究に力を入れすぎるべきではない」
と言われたこともあります。
やりたい気持ちと、やりすぎなのかもしれない不安。
その間で、何度も立ち止まりました。
探究はどんな流れで進みましたか?
私は、日常の違和感から問いを立てます。
昔から少し感受性が強く、「なんでこうなるんだろう」「この感情の正体は何だろう」
と考えてしまう。
時にはその性質にも悩むこともありました。
でも探究では、それを強みに変えました。
問いを立てる。仮説をいくつか考える。今できる検証をする。結果と照らし合わせる。
また、問いを立てる。
このサイクルを繰り返しました。これらを繰り返すことで、どんどん進めていく過程で
「私が本当にしたいこと」と逸れてしまうのを防いでいました。
最後に
探究は、評価や結果だけで測れるものではありません。
「何に引っかかったのか」「何を面白いと思ったのか」
その感覚を、大切にしてほしいです。
迷っている時間も、止まっている時間も、ちゃんと探究している証です。
どうか、自分の気になることに自信をもって、
自分らしさ全開の探究を、楽しんでください。